- Leather Wastes(革屑)
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L290 × W100 × H95mm
フランス製カーフ(作品内部、靴部)
日本製にべ革(作品表面)
2014年作
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2011年、ウィーンから帰国後、表現の幅を広げるために革工芸を学ぶ中で、三澤は皮革工芸美術の第一人者、猪俣伊治郎(1933-2020)と出会う。その作品と人間に魅せられ、アーティストとしてかくありたいと、以降、猪俣を心の師と仰ぐようになる。尊敬する猪俣に、自分の作品を見てもらいたい、その一心で挑んだのが、猪俣が審査員を務める日本革工芸展だった。
普段、立体である靴制作を生業にしている三澤にとって、皮革工芸はいかにして平面で表現するかを学ぶものであり、本作はその集大成として制作された。靴作りで、通常破棄される靴底のニベと呼ばれる革を革包丁で剥く。様々な種類のニベから剥いた革が織りなす色調の微妙な変化に気を配りながら、作品全体に貼り付け、絵画的に表現。経過した時間と物語を感じさせる風合いに仕上げた。靴が埋め込まれたような背景は、靴のソールの延長であり、靴作りの手法で縫い付けてある。
革靴の革は、動物の皮である。オーダーメイドのビスポークシューズは、一点の曇りのない、鏡の如くピカピカに磨き上げたものがよしとされ、三澤も完璧な靴を目指し靴職人として生きている。その一方で湧き上がる、素材が自然のものであるなら、もっと表情があるべき、という相反する思いが、本作で解放されているかのようだ。靴作りと作品制作。この二つを行き来することで、三澤にしかできない表現が可能となることを示す「革屑」は、第33回日本革工芸展「文部科学大臣賞」を受賞した。