- 化身
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L230 × W100 × H300
2017
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“想像とは、本質的に記憶の想起である。想像とは、アイディアの組み合わせが何であれ、複数の要素をまとめる創作であり、経験から得た知識を新しいフォーマットにアレンジしていく一連の行為である。“ 工業デザイナーの巨匠で三澤とも交流のあったビジュアル・フューチャリスト、Syd Meadの言葉を具現化するように制作を続ける三澤の作品の中でも、組み合わせの妙に目を見開き、唸らされる作品が「化身」だ。
2017年、ニューヨークで開催した個展に向けて構想された本作のテーマは「日本の美」の表現だ。伝統的建造物、美術品の多く残る古都京都を旅し、手に入れた端切れを用い、十二単衣に代表される、「重ねの色目」を楽しむ独自の衣装や、浮世絵に特徴的な「縁取り」といった、浮かんでくるイメージをつなぎあわせながら、手を動かす。とりどりの模様と明るい色が目に楽しい布の裏地に縫い合わせた表地は、革の屑として通常破棄されるニベ革を使用し、染料で茶に染め、日本画の顔料のような質感を持たせ、金箔を散らした。靴のための特製「服」は、ツーピースとなっており、アッパーに履かせたスカートの折り返し部分は、現れた裏地が着物の帯のようで、折り返す位置とボリュームによって表情が変わる。「服」から覗く靴本体の青黒色は、修験道の本尊、蔵王権現像から。右手を高く掲げ、忿怒相で立つ蔵王権現の光背に燃え盛る火炎の、上へ上へと上っていくイメージも、本作を支える柱だったという。日本に伝わる文化の特徴的な要素を組み合わせ、新たな靴としてまとめ上げた、まさに三澤ならではの「日本の美」だ。
photos by Isao Negishi